書籍紹介

 国民のための「食と農」の授業 ファクツとロジックで考える

国民のための「食と農」の授業 ファクツとロジックで考える

山下一仁(著/文)

【著者より】
多くの人が世界の所得分布についての事実(ファクツ、データ)を知らないで議論しているという内容の『ファクトフルネス』という本がベストセラーになりました。同じように、食料や農業についても、たくさんの“ウソ”があります。専門家と言われる人も間違った認識に基づいて政策を論じています。また、意図的に流されるフェイクニュースもあります。

東大・公共政策大学院の講義を基にしたこの本では、正しいファクツやデータを踏まえ、食料や農業の重要課題について費用便益分析に基づきどのような政策を採るべきかを議論します。世界の食料・農業情勢、食料安全保障、食の安全、農業と食品産業、食料・農業についての国際規律、日本と世界の食料・農業政策、日本の農政の歴史・課題・改革方向など、国民に知ってもらいたいことを説明しました。

同時に、どのような政策を採用すべきかということだけでなく、どうして望ましい政策が実現してこなかったのか、政策形成に関係するアクター、政策決定過程についても述べました。

国民が食の不安を忘れ、農協、農林族議員、農林水産省の農政トライアングルに食料・農業政策を任せてしまった結果、食料安全保障は危機的な状況になっています。50年間で米生産は半減され、農地は宅地への転用や耕作放棄で440万ヘクタールしかありません。終戦直後人口72百万人、農地面積600万ヘクタールでも飢餓が生じました。今は、人口は125百万人なのに、当時をはるかに下回る農地しかないのです。シーレーンが破壊され、食料の輸入が途絶すると、国民は大変な危機に直面します。ロシア軍に包囲され食料が手に入らなくなっているウクライナの都市の現状は、他人事ではありません。本書が、国民の手に食料・農業政策を取り戻すためにお役に立つことを期待します。


出版社 日経BP 日本経済新聞出版本部
ISBN 978-4-532-35916-4
価格 本体2,700円+税
発行 2022年3月初版

山下 一仁

山下 一仁

Kazuhito Yamashita

研究主幹

[研究分野]
農業政策・貿易政策

概要

ファクツとロジックを積み重ね、世界に通じる普遍的な視点から、体系的、平易に日本の「食と農」の全体像を解説。農業に関する誤った常識を払拭。日本農業の実態、可能性を正しく伝える。東大講義をもとにした総合解説書。

「農業人口が減るのは問題だ」「農業だけで食べていけないから、兼業せざるをえない」「食料自給率は引き上げなければならない」「企業参入を進めれば、農業は活性化する」「日本の農業コストが高いのは、土地の価格が高いためだ」等々。
この本を読み終えるまでに、読者の皆さんはこれらが正しいかどうかを判断するファクツを見つけるでしょう。本書を読めば、日本の食と農についての重要な事実、考え方が身につきます。そして、読み終われば、食料や農業についてのこれまでの見方が一変します。

農水省時代には国際交渉で活躍し、中山間地の農業問題の解消に取り組み、国内外の政策に通じ、スタンダードな経済学をベースに国際的な視野から農業を真に発展させる政策への転換を長年にわたり訴えてきた著者が、政策担当者、研究者としての経験、見聞、観察、知識のすべてを総動員し、だれにもわかりやすく噛み砕いて、日本の食と農の本当の姿を伝える入門書の決定版です。

農業=食料生産に関わる問題だけでなく、食の流通・消費も含めたフード・システム、食の安全保障・食の安全、持続可能性、国際的な規律、政策の歴史、技術革新を踏まえた展望など、幅広い内容です。「食料安全保障と多面的機能の維持」という農業政策の基本目的に沿った現実の紹介を行い、ポジティブな日本の食と農の未来への展望を示します。

目次

はじめに

序章 ファクツとロジックで考えよう

第1章 食料・農業政策の目的と政治:なぜ望ましい政策が実行されないのか?
  
第2章 日本の食料・農業・農村のファクツから出発しよう
  
第3章 食料・農業のセオリーとアプリケーション:ベーシックな経済学
  
第4章 世界の食料・農業事情と持続的な農業
  
第5章 食料安全保障について考える
 
第6章 食の安全について考える 

第7章 フードシステムと食料消費について考える
  
第8章 食料・農業および食の安全についての国際規律
  
第9章 日本の食料・農業政策の歴史と思想
  
第10章 日本の食料・農業政策:概要と改革の方向
  
第11章 新技術と日本農業の可能性

正誤表

ページ 
5 7 食糧管理制度や
食料安定保障
食糧管理制度
64 10 108万トン 131万トン
64 11 3割以下 3分の1以下
114 後から4 農林族議員 農林族議員は、
125 10~11 また、転用する場合でも、
譲渡所得税が累進課税になっているため、農地が小出しに転用され、細分化されます。
削除
148 後から2 地下水位低下のなど 地下水位低下など
238 1 S,F1,F2,P' S,F1,F2,F4,P'
239 後から5 農業関税 農産物関税
248 3 農村水産品 農林水産品
314 図10-3 長粒種 中粒種、単粒種
314 図10-3 中粒種、単粒種 長粒種
337 図10-16
2021,4月期
10.5 37.6 14.2 33.8
337 図10-16
2021,10月期
5.2 52.1 14.4 42.8
337 11 4月 10月
337 11および12 11円 14円
337 13~15 (2021年10月の,,,からだとおもいます) 削除